上司はやはり相談しにくい?
先輩社員が後輩社員の相談役となり育成を手助 けする「メンター制度」が、企業に広がってきた。直属の上司ではない先輩社員に、気軽に相談や助言を求められる点がメリットだ。日本の“ムラ社会”の長所 に通じるとの指摘もあり、女性管理職や新人社員の育成で効果を発揮している。
「完璧を求めなければ、仕事と家庭の両立は可能と気付いた」「やりたい仕事のビジョンがみえた」
大ガスは今年5月、主任格以上で入社10年以内の女性総合職全員を対象に、メンター制度を導入。他部署の課長級以上の先輩社員がメンターとなり、月1回 懇談している。管理職に向けた中長期のキャリアを描いてもらうのが目的で、「昔なら他部署の先輩が飲みに誘うこともあったが、相談相手を増やす機会をつく る」(ダイバーシティ推進チーム)狙いもある。
エネルギー事業部の松本希さん(29)は「出産、育児などの人生設計で悩んだが、上司に家庭のことばかり相談すると、仕事への意欲がないと思われそう。経験豊富なメンターとの話は参考になる」と話す。
大ガスはメンター制度の活用で、現在2%程度の女性管理職比率を平成32年までに5%以上に引き上げることを目指している。
食品製造のカネテツデリカフーズ(神戸市)は、新入社員に2~3年先輩の社員をメンターにつけ、プライベートな相談にも乗らせた。「年齢の近い先輩がつ くことで、指導内容が身に付きやすい」(同社)といい、50%超に達した年もあった離職率(入社3年以内)は、ここ数年は数%程度と劇的に改善した。